哲也昆虫記 ~ファーブルになりたかった少年~ ①フンコロガシ? その3

竹べらなんかでどうするのか・・・。

「ちょっとごめんね・・・。」

哲也はだんごの一つを穴から取り出した。

メスに申し訳ないとは思ったが、好奇心が勝った。

哲也は竹べらでそーっとそのだんごをうすく切った。

何もない。

もう少し切った。

するとなんとなく小さな空洞があるように感じた。

そこから慎重にその空洞のあたりの糞をうすく取り除いた。

すると・・・。

白くて楕円形のものが現れた!

間違いない!卵だ!

「やった!見つけた!」

哲也は卵を見つけた感動で思わず声を出した。

本当に糞の中に卵を産んでいるのだ。

もしかすると、全部糞のだんごを開けてみれば、すでに幼虫になっているものもあるかもしれない。

しかし、さすがにそこまでは・・・。

がんばってだんごをつくり、産卵し、その穴にとどまって番をしているメスに申し訳ない。

哲也は、竹べらにくっついた糞をだんごに戻して、卵を隠してから

それをまた穴に戻した。

この愛情たっぷりの糞玉の中で、卵は幼虫になり、幼虫は蛹になり、そして羽化して

また新しい命を生み出すのだろう。

そう考えると、哲也はなにか言葉では言い表せない感情に包まれた。

こうして命がつながっていくのだと感じた。

感動のダイコクコガネとの出会い。

オスもメスも見ることができ、さらに卵も見つけた。

こんなに嬉しいことはない。

しかし、欲深い哲也はこれで満足はしていなかった。

ほかにも糞虫のなかまはいるはずだし、そもそもふんころがしてない!

というわけで、哲也はそこから数メートル離れた別の糞のところに移動することにした。

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