哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ①三段池の野鯉 その1

哲也は小さなころから釣りをしていた。

もともとは父が多々良川でハヤを釣るのについていき、教えてもらって覚えた。

基本のベ竿(リールをつけない竿)で、ウキ釣りをよくやっていた。

小3くらいのころに、父の友人がリールを使った吸い込み釣りを教えてくれて、さらに使わなくなったリールとリール竿をくれたことから、吸い込み釣りにはまった。

吸い込み釣りが好きな理由は、のんびりもできるし、忙しくもできるというところ。

のんびりしたいときは、吸い込み釣りだけやる。

ねりえをだんごにして、吸い込み針につけ、リールで投げる。

あとは竿先に鈴をとりつけ待つだけ。

忙しく、いろいろ釣りたいときは、吸いこみ仕掛けを投げ込んでおいて、岸辺でのベ竿でウキ釣りをする。

哲也がよく行っていた場所に三段池というのがあった。

文字通り、池が三段ある。もともとは農業用水をためておくためのものだが、ここに魚がたくさんいた。

魚種も豊富だった。

コイ、フナ、オイカワ、ブルーギル、ブラックバス。

テナガエビやワカサギなどもいた。

自分はここで確認できなかったが、ライギョもいるといううわさだった。

なので、ここに来て吸い込み釣りでコイやフナをねらいつつ

オイカワやブルーギルをウキ釣りで狙うという具合だ。

まったく釣れないという日が少なく、おもしろい釣り場の一つだ。

小4になったある日、哲也はまたこの三段池にでかけた。

この日はのんびり釣りたかった。

というわけで、吸い込み釣りの仕掛けだけ持ってでかけた。

三段池の中でも、コイが多いといううわさの二段目で釣ることにした。

釣り座を決めるとすぐに、哲也はねりえを水にといて、だんごをつくりはじめた。

そして吸い込み針にとりつけて準備した。

哲也は竿を握ると、大きく振りかぶってだんごを投げた。

シュルシュルと糸が出ていき、だんごは空中で孤を描いた。

そのあとボチャンと水音を立てて沈んでいった。

うまく投げれたようだ。

投げ終えると、ゆっくりとリールを巻き、糸フケをとる。(糸のたるみをとりピンと張らせる。)

そして竿を竿たてにセットし、竿先に鈴をつける。

あとはごろんと寝っ転がって待つだけだ。

こうして耳をすませながら、ぼーっと空をながめ、雲の流れを見たり、頬に当たる風を感じたりするのが好きだった。

ここ最近疲れていた哲也は、せかせかといろんな釣りをするよりも、この日はとにかくゆったりとすごしたかった。

だったら家で寝とけばいいんだろうが、やはり自然の中にとけこみたいのだ。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *