カマキリ。 強くてかっこよくて、まさに草原の王者。 男の子なら憧れる者も多い虫ではないだろうか? 哲也ももちろん、カマキリが大好きでした。 カマを広げて威嚇する姿・・・。 これを見るために草原に入る。 毎回は見つからない。 バッタをつかまえるときに、たまに見つける。 カマキリをつかまえたときは、いつもより嬉しくなって帰る。 そして、飼育するときは、バッタも一緒に持ち帰る。 かわいそうだが、エサが必要だ。 そして飼い始めると、毎日エサをとりに出かける。 ときにはバッタのなかま、ときにはチョウ、セミなんかを入れることもあった。 エサを切らさないようにするのは大変だが、毎日カマキリの勇姿を見れるのは楽しい。 カマキリ(チョウセンカマキリ)、コカマキリ、ハラビロカマキリ、ヒメカマキリ、ウスバカマキリなど・・・。 どれも魅力的で好きだったが、なかでもとりわけオオカマキリが大好きだった。 (哲也は大きい種を好む傾向にあるらしかった。セミはクマゼミ、トンボはオニヤンマ、クワガタはオオクワガタやミヤマクワガタ、バッタはショウリョウバッタという感じだ。) ただ残念なことに、どんなに強いカマキリも、秋の終わりまでには死んでしまう。 冬の間は見ることができないのでさびしいものである。 そんなときは、哲也はとにかく図鑑や本を読み漁った。 そして次のシーズンに思いを馳せる。 そして夏になると、またフィールドに向かうのだ。 夏の終わりのある日、哲也はオオカマキリを見つけることができた。 しかも、大きいやつと、ひとまわり小さいやつの2匹だ。 彼らは一緒にいたわけではなかったが、近いところにいた。 哲也はそれらを持ち帰ることにした。 図鑑で知っていたので、大きいほうがメスで小さいほうがオスであろうと思った。 このたまたま同じ日に、オオカマキリのオスとメスをつかまえたことで、哲也はどうしても見たい場面があった。 1つは交尾。 本によれば交尾後、メスはオスを食べるらしい。 そんな場面を見れるといいなぁと思っていた。 そして1つは産卵。 さらに産卵が成功すれば、次は孵化。 これらを本や図鑑の写真じゃなく、実際に目で見てみたい。 そう思い、哲也は準備をすることにした。 もちろん活躍するのは父がつくってくれた背が高い大きな虫かごだ。 小瓶に水を張り、草を入れたものを数か所準備。これはカマキリの生息地の草原を再現するためと、エサにするバッタのエサにするためである。 バッタだけを飼うならこれでいいのだが、カマキリに産卵させたいので、それとは別にササや木の棒をいくつか持ち帰り、まっすぐに立てておいた。 野外でカマキリの卵は何度も見たことがあった。 ときどき壁に産んでることもあったが、基本冬になっても枯れてしまわないようなしっかりした細い木の枝や、草の茎なんかでよく見つけた。 なので、そういうものを再現することにしたのだ。 できあがったカマキリの家に2匹のカマキリを放つ。 そしてつかまえておいたバッタたちも放つ。 哲也のカマキリ累代飼育プロジェクトの始まりである。