哲也昆虫記 ~ファーブルになりたかった少年~ ②マイマイカブリ その5

マイマイカブリの死。

悲しいものではありましたが、これまでもたくさんの虫を飼ってきた哲也にとって、それは当たり前のことであり、何度も乗り越えてきたことだ。

またつかまえればいい。

そう思いつつ、哲也はまた山に入る。

ある初夏の山中・・・。

雨上がりのじめじめした山中に、哲也の姿があった。

クワガタをはじめ、いろんな昆虫を探す哲也の姿が・・・。

まあ、いつものことだが・・・・。

この日、哲也はあっと驚く光景を目の当たりにする。

「なんだこりゃ?」

尋常じゃない雰囲気に、哲也は歩みを止め、違和感のある方向を見つめた。

そして網をかまえた。

黒光りして、気持ち悪い節だらけの体を持つ生き物。

それが何匹も1つの大きなカタツムリに群がっていたのだ。

このとき、哲也は図鑑のあるページを思い出していた。

もしかしてこいつら・・・・。

「マイマイカブリの幼虫か!?」

動きを止めていた哲也は、急に網を持つ手をぐっと握りしめたかと思うと

次の瞬間!素早く網を振り下ろしていた。

入った!

異変を感じたのか、彼らが動き出した。

しかし、哲也は彼らが逃げるのを許さなかった。

軍手をはめた手で網ごと彼らをつかむと4,5匹手につかんだのがわかった。

そのまま網をひっくり返し、網の中に落とし込んですぐに網の口を押えた。

「とれた!」

おそらくマイマイカブリの幼虫と思われる生き物を5匹捕まえた。

哲也は慌てて虫かごに入れると、意気揚々と家に戻った。

似たような幼虫でオサムシの可能性もあるが、図鑑の写真と見比べながら、たぶんマイマイカブリだろうと思った。カタツムリをおそっていたこともあるしね。

まあ、オサムシならオサムシでもいいと思った。哲也はオサムシも大好きなので。

とりあえず、例の父がつくってくれた虫かごに彼らを放した。

また、ミミズ中心にエサを与えつつ、かたわらでカタツムリを育てながら与えるという作業が始まった。

それにしても今回は5匹。

エサやりは大変だった。

普段からカタツムリを見ればとにかく持ち帰り、毎日畑でカタツムリを探す日々だった。

なんとしても羽化するところを見たい!

その一心で、がんばって育てた。

ところが、簡単にうまくはいかない。

ある日、学校から帰ると、かごの中で大変なことが起こっていたのだ。

なんと!

1匹の幼虫に、残りの4匹が群がっていたのだ。

その1匹はひっくり返った状態で足をバタバタさせているが、他の4匹は容赦なくそいつを襲っている。

実は、捕獲した際に1匹の幼虫が少し傷ついていた、足が1本とれたのと、背中に少し傷が入っていた。

かごに入れたとき、彼は元気そうだったのだが、数日ほどたったときになんか動きが悪いと思っていた。

どうやら彼らは、元気なうちは仲間として過ごすようだが、弱るとエサとして見るようだ。

これはほかの虫でも見られるので、最初はがっくりきたが、仕方ないと思った。

これも弱肉強食の世界の理だ。

結局、彼はみんなからバラバラにされてしまった。

こうして4匹になってしまったが、哲也はそのあともエサを与え続け、一生懸命育てた。

ところがあるときを境に、なんかえさをいれてもあまり食べなくなった。

「どうしたんだろう?大丈夫かな?」

心配だったが、どうすることもできない。

そしてなぜか1匹、また1匹と数が減っていった。

また共食いか?と思ったが、死骸は見つからない。

ついには1匹も7いなくなった。

逃げたんだろうか?穴が開いたりもしてないが・・・。

結局わからないままだった。

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