マイマイカブリの死。
悲しいものではありましたが、これまでもたくさんの虫を飼ってきた哲也にとって、それは当たり前のことであり、何度も乗り越えてきたことだ。
またつかまえればいい。
そう思いつつ、哲也はまた山に入る。
ある初夏の山中・・・。
雨上がりのじめじめした山中に、哲也の姿があった。
クワガタをはじめ、いろんな昆虫を探す哲也の姿が・・・。
まあ、いつものことだが・・・・。
この日、哲也はあっと驚く光景を目の当たりにする。
「なんだこりゃ?」
尋常じゃない雰囲気に、哲也は歩みを止め、違和感のある方向を見つめた。
そして網をかまえた。
黒光りして、気持ち悪い節だらけの体を持つ生き物。
それが何匹も1つの大きなカタツムリに群がっていたのだ。
このとき、哲也は図鑑のあるページを思い出していた。
もしかしてこいつら・・・・。
「マイマイカブリの幼虫か!?」
動きを止めていた哲也は、急に網を持つ手をぐっと握りしめたかと思うと
次の瞬間!素早く網を振り下ろしていた。
入った!
異変を感じたのか、彼らが動き出した。
しかし、哲也は彼らが逃げるのを許さなかった。
軍手をはめた手で網ごと彼らをつかむと4,5匹手につかんだのがわかった。
そのまま網をひっくり返し、網の中に落とし込んですぐに網の口を押えた。
「とれた!」
おそらくマイマイカブリの幼虫と思われる生き物を5匹捕まえた。
哲也は慌てて虫かごに入れると、意気揚々と家に戻った。
似たような幼虫でオサムシの可能性もあるが、図鑑の写真と見比べながら、たぶんマイマイカブリだろうと思った。カタツムリをおそっていたこともあるしね。
まあ、オサムシならオサムシでもいいと思った。哲也はオサムシも大好きなので。
とりあえず、例の父がつくってくれた虫かごに彼らを放した。
また、ミミズ中心にエサを与えつつ、かたわらでカタツムリを育てながら与えるという作業が始まった。
それにしても今回は5匹。
エサやりは大変だった。
普段からカタツムリを見ればとにかく持ち帰り、毎日畑でカタツムリを探す日々だった。
なんとしても羽化するところを見たい!
その一心で、がんばって育てた。
ところが、簡単にうまくはいかない。
ある日、学校から帰ると、かごの中で大変なことが起こっていたのだ。
なんと!
1匹の幼虫に、残りの4匹が群がっていたのだ。
その1匹はひっくり返った状態で足をバタバタさせているが、他の4匹は容赦なくそいつを襲っている。
実は、捕獲した際に1匹の幼虫が少し傷ついていた、足が1本とれたのと、背中に少し傷が入っていた。
かごに入れたとき、彼は元気そうだったのだが、数日ほどたったときになんか動きが悪いと思っていた。
どうやら彼らは、元気なうちは仲間として過ごすようだが、弱るとエサとして見るようだ。
これはほかの虫でも見られるので、最初はがっくりきたが、仕方ないと思った。
これも弱肉強食の世界の理だ。
結局、彼はみんなからバラバラにされてしまった。
こうして4匹になってしまったが、哲也はそのあともエサを与え続け、一生懸命育てた。
ところがあるときを境に、なんかえさをいれてもあまり食べなくなった。
「どうしたんだろう?大丈夫かな?」
心配だったが、どうすることもできない。
そしてなぜか1匹、また1匹と数が減っていった。
また共食いか?と思ったが、死骸は見つからない。
ついには1匹も7いなくなった。
逃げたんだろうか?穴が開いたりもしてないが・・・。
結局わからないままだった。