哲也は最後のビンの前に立った。
アリやハエだらけだったり、シデムシがたかっていたほかのビンの気持ち悪い状況が脳裏によぎる。
なかなかのぞく勇気が出ない。
だが、見るしかない。
哲也はなんとか気持ちを高揚させようとした。
ミミズはオサムシが実際に食べているのを見たことがある。
実際には一番確率高いんじゃないか?
そう思うと・・・。
「よし!」
一声上げて気合入れてビンにさらに近づき、ついに覗き込んだ。
その瞬間!
「いる!」
哲也は大きく声を上げた。
オサムシだ!
間違いない。
たった1匹だったが、オサムシがいる。
前に捕まえ損ねた真っ黒のやつとは少し違っていた。
からだの幅が広く、光沢が強い気がした。
哲也はしばらくそのままビンの中を見続けた。
ミミズにかみついてる。
ミミズはあちこちにキズができていて弱り切っているようだった。
もちろん、アリやほかの小さな虫もいたが
そんなもの気にもならなかった。
あの素早くてつかまえにくい、と言うよりは一度も捕獲に成功していないオサムシが手の届くところにいる。
哲也はしばらく観察してやっと動き出した。
軍手を取り出し、手にはめたあと、ピンセットをつかんだ。
そのままビンの中に入れ、ピンセットでオサムシをつかみあげた。
「やったー!」
哲也はそれを虫かごに入れた。
歓喜にうちふるえていた。
ビン作戦大成功!といったところか。
哲也はビンを回収し、家に帰った。
オサムシを容器にうつし、飼育の準備をした。
プラスチックケースの底に砂や土を混ぜてしき、小さな石ころや落ち葉や木の枝などをちりばめた。
そして、そこでミミズを入れて飼おうというわけだ。
ここで、飼育のことを少し調べようと、いくつかの本を見ていたら・・・・。
なんと!
コップを土にうめる採集法が載ってるではないか!?
哲也はすごい方法を考え出した!と思っていたのに
普通に本に載ってる方法だった・・・・。
まあ、いいか!
というわけで、哲也はまた改めてワナをつくり
今度は3本ともミミズを入れてオサムシをもう少しとろうと思った。
作戦は成功し、3匹追加してケースの中は賑やかになった。
よく見ると、異なる種類が存在していて
図鑑からおそらく
オオオサムシとクロカタビロオサムシではないかと思ったが、所詮小学生の同定力なので、今となっては定かではない。
とにかく、この日から哲也のオサムシ飼育が始まったのだ。