哲也は4匹のオサムシを同じケースに入れた。
正直、オス、メスが混じってるのかさえもわからない。
そもそも肉食の昆虫は共食いの危険性があるので、多頭飼育はNGだなんてこと
幼い哲也は考えもしなかった。
とにかくオサムシを育てたい。
そして、カブトムシでは成功している産卵→幼虫飼育→成虫まで育て上げるという、いわゆる累代飼育ができればいいなと思っていた。
これができれば、めんどうな採集は今後必要なく、いつでもオサムシが見れると思ったのだ。
とにかく、哲也はそれら4匹に、ミミズなどを入れて一生懸命育てた。
ある日、交尾の場面にでくわした。
少なくともオスとメスが混じってはいたみたいだ。
このまま、産卵してくれれば・・・。
しかし、そううまくはいかなかった。
ある日、ケースを除くと、1匹に群がるように3匹が囲んでいた。
その1匹はひっくり返って、弱々しく足をばたつかせていたが
他の3匹は容赦なくそれを噛んでいたのだ。
やばいと思ったが、その1匹はすでにボロボロで、助けようがなかった。
さらに別の日には、また1匹死亡していた。
そうこうしているうちに、4匹すべて死んでしまった。
ミミズを畑で調達し、食べる様子を見るのは楽しかったが、もう見ることができない。
しかしながら、交尾は間違いなく確認したのだ。
もしかすると・・・・。
期待を抱いたまま、翌年を迎えた。
暖かくなったら幼虫が出てくるかもしれない。
しかし、結局何も出てこないまま夏になった。
累代飼育は失敗に終わった。
哲也はまた例のビンをつかったオサムシトラップをしかけに行った。
そのときに、なんとオサムシの幼虫をとることができた。
哲也はその幼虫を大事に飼った。
しばらくすると、姿が見えなくなり
その後、オサムシが羽化してきたのだ!
累代飼育には失敗した哲也だったが、なんとか幼虫を育てて成虫にすることはできたのだ。
これで満足し、哲也はその次の年からオサムシ採集をやめた。
掃除屋として、シデムシやゴミムシたちといっしょに死肉を食らうオサムシを見て、その形や色にあこがれてオサムシをつかまえようと思った哲也だったが、採集した幼虫から蛹化→羽化に成功したことで、うれしかった反面、熱が冷めてしまった。
今もオサムシを発見すると嬉しいが、もう採集はしない。
ミミズを与えながら飼育したオサムシたちの姿は、飼育しなくなった今も、哲也の心に焼き付いている。