哲也の住んでいた家から5分もかからずに川に行ける。
今でこそ護岸工事で見る影もなく、生き物もすめない川になってしまったが
当時はなんでもとれる川だった。
魚はコイ、フナ、ナマズをはじめ、カマツカ、ドンコ、ドジョウ、ハヤ、オイカワ、メダカ、ヨシノボリなどがたくさんいて、釣りをしたり、つかまえたりしていた。
魚だけではない。ザリガニはすぐにバケツいっぱいになるほどとれたし、サワガニはたくさんとれるので、よく空揚げにしてもらった。カワニナやシジミもいたので、ときどきとってきてばあちゃんに料理してもらったりもしていた。タエビもたくさんいて、つかまえて魚釣りに持っていったりしていた。なかなかとれなかったが、スッポンもいた。
その川というのは多々良川。初夏はホタルも飛び交ういいところで、哲也の格好の遊び場だった。
そして、哲也がつかまえる生き物として忘れてはならないのは昆虫だ。
この多々良川、先述の通り、今は護岸工事で水もほとんどないつまらない川になってしまったが、昔は河原には草が生い茂り、川岸にも草がたくさん生えていたし、大小さまざまな石や岩もごろごろしていたし、もちろん水草もあちこちに生えていた。生き物の宝庫だ。
アメンボはいつも浮いていたし、ときどきタイコウチが泳いでいるのを発見できた。
このころタイコウチは珍しくはなかったが、毎回会えるものでもなく、見つけるとテンションが上がった。
何度か持ち帰って水槽で飼ってみたりもした。エサの調達はカンタンだ。同じ川からメダカやオタマジャクシを一緒につかまえてくればいいのだから。
大きな水槽に、これもまた川からとってきたオオカナダモを生やし、その中にタイコウチとメダカをはなす。
自然の川の中では、なかなかエサをとるシーンは見られなかったが、飼育すると見ることができた。
まあ、ただエサ与えるだけしかしなかったし、飼い方もよくわからないので、毎回数日~数週間で死なせてしまっていたが・・・。
それでも、そうした虫を飼うのはやはり楽しかった。
ほかにも網をつかって水草のまわりをガサガサやると、いろんな虫がとれた。
シマゲンゴロウ、ガムシ、マツモムシなどがとれた。
そんな中、どうしてもとりたいが、とれなかったものが4種いた。
ゲンゴロウ、ミズカマキリ、コオイムシ、タガメの4種だ。
これらはそもそも多々良川にいたのか?今となってはわからないが・・・。
ただ、水生昆虫がいる場所は多々良川だけではない。哲也はいろんな水路やたんぼ、多々良川の支流などに出向いて、昆虫採集をやってみた。