幼虫がいなくなってしばらくは、何度もカゴの中を確認してみたりしていたが、そのうちあきらめがつき、確認しなくなった。 ところがある日、学校から帰ったときのこと。 かごの中で何かが動いた気がした。 「なんだ?」 そーっとかごに近づき、中を見てみると・・・。 「マイマイカブリだ!」 なんと!そこには成虫のマイマイカブリがいたのだ。 このとき、哲也はすべてを理解した。 そうか!土中で蛹になるために、みんないなくなったんだ。 そして、羽化してでてきているのか! よく見ると、成虫は2匹いた。 それから数日のうちにもう1匹増えていた。 合計3匹。幼虫は4匹いたので、1匹は蛹時代に死んでしまったか、羽化しきれなかったか・・・。 いずれにせよ、出てこなかった。 そのことは残念だが、いずれにせよつかまえてきた幼虫が無事羽化して成虫になった。 これは本当にうれしかった。 カブトムシの幼虫なども育てていたが、全部羽化するのって意外と難しく、蛹になるときや、羽化するときなんかに死んでしまうことがあったので、初めて飼育したマイマイカブリで4匹中3匹も羽化したのはすごく感動的なことだった。 ここで、哲也は欲が出てきた。今3匹もいるんだ。これらが卵産んで、また幼虫が出てくるとすごいんじゃないか? でも、そもそも彼らはオスメスが混じってるのかもわからない。 何度も見比べたが、どれもあまり違わないし。 いろいろ調べたが、結局オスメスの区別の仕方もわからなかった。 とりあえずは前と同じように、カタツムリを飼育し、ときどき与えつつ、ないときはミミズで代用して育ててみた。 しかし、結局交尾、産卵などの行動は見られず、幼虫の姿も見られず、最後は3匹とも死んでしまった。 環境が悪かったのか、オスメスが混じってなかったのか、今となってはわからない。 しかし、残念ながら哲也のマイマイカブリ累代飼育作戦は失敗に終わったのだ・・・。 それから、熱が冷めたように、哲也はマイマイカブリを追わなくなった。 道中、1匹のマイマイカブリを見つけても捕まえたりしなかった。 カタツムリを与えるのが面倒なのと、やはりくさいのと、そして何より累代失敗したのとで、少々この虫の飼育についてはトラウマになってしまったようだ。 マイマイカブリを追わなくなっただけで、哲也の昆虫熱は冷めることはなかった。 小学校低学年のころは、虫は夏にとるものと思い、春や秋は若干とりにいくものの、冬場はまったく採集には行っていなかった。 ところが、冬のある日、近所のお兄ちゃんが「カブトムシとりに行こう」と誘ってくれたのだ。 「冬なのに?」 と聞き返すと、幼虫を掘りにいくのだと言われた。 そうか!冬でも幼虫なら採集できるんか! で、一緒にとりに行き、たくさんとれた幼虫を二人でわけて、飼育を始めた。 これまでは卵を産ませてその幼虫を育ててたが、冬に幼虫をとりに行くということを覚えた。 このとき、哲也はある本の中の1つのページを思い出していた。 クワガタも冬に幼虫として過ごしている。そして彼らはカブトムシのように腐葉土の中にいるのではなく、朽木の中にいる。 哲也は父にナタを借りて山に入った。 最初要領を得なかったが、だんだんコツをつかみ、何度か採集に成功した。 クワガタの幼虫採集の詳細はまた別編で。 冬のある日、またまた哲也は山にでかけた。 枯れたクヌギの倒木がある場所。哲也は夏の山を思い返すときに、その場所を思い出し行ってみることにした。