哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ①三段池の野鯉 その2

寝転がって、風を感じながらも

哲也は竿先の鈴を気にかける。

のんびりしたいとは言っても、やはり釣果は気になる。

しばらく時間が経ったが、まるで反応なし。

いつもなら鈴が鳴り、フナの1匹も釣れてるころだが・・・。

哲也はコイを釣りたいとは思っていたが、なかなか釣れないのはわかっている。

しかしフナは毎回何匹かは釣れていた。

哲也は自分が釣りがうまいとは思っていなかったが、下手だとも思っていなかった。

ボウズ(何も釣れないこと)の日もあったが、ほとんどの場合、なんらかの成果を上げてきた。

しかし、この日の鈴はずっと沈黙している。

しびれを切らした哲也は仕掛けを巻き上げた。

エサもほぼ残っておらず、つけかえの時期だったのだろうと、もう一度気を取り直してだんごを針につけて池に投げ込む。

またしばらく寝っ転がる。またアタリはない。

のんびりしたい気持ちとは裏腹に、釣れない焦りから、いろいろ考えだす。

またしかけを巻き上げた哲也は、ねりえの配合を変えることにした。

さなぎ粉を多めにする作戦に切り替える。

本当はしたくなかった。さなぎ粉を増やすと、だんごのねばりが少なくなり、リールで投げ込むときにえさが飛び散ることがある。そのため思い切り遠くへ投げることができなくなる。

それでも、ここまで成果が上がってないのだから、やり方を変えるのは当然だと思った。

ふなの1匹でも釣らなければ、何よりかっこうがつかない。

哲也はさなぎ粉を多めにんしただんごをつくり、針につけた。

そして、これまで投げてた方向とは少し違う方向に向けて、飛距離も抑えめに投げた。

ボチャンと音がしてねりえが着水した。

だんごが飛び散ることはなく、うまく投げ込めたようだ。

哲也はまた寝っ転がって、風を頬に受けながら、目をつぶった。

竿先は見ずに、ぼうしを顔にのせて目を隠した。

そうして耳だけを澄まし、風の音に混じって鈴の音が聞こえてこないかと待ち構えた。

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