哲也昆虫記 ~ファーブルになりたかった少年~ ②マイマイカブリ その2

雨上がりの雑木林。

草をかきわけるだけで、スボンも服もびしょびしょ・・・。

「また帰ったら怒られるなぁ・・・。」

こうやって服を濡らして、汚して怒られるのはしょっちゅう。

でも、やめられない。

山に入れば汚れるさ。

哲也は怒られる心配をしつつも、林の中をすすんだ。

お目当てのクヌギの木を目指す。

狙いはクワガタだ。

ところが、いつもなら樹液にいろんな虫がきているその木だが

何もいない。なんか静まり返っている。

いつも賑やかな昆虫酒場は、客一人おらず、閑古鳥が鳴いている。

「はぁ。やはりこんな天気じゃダメか・・・。」

それでも、木の根元を掘ったりして小さいが数頭のクワガタを発見した。

「今日はこんなものかな。」

哲也は天気のせいだからしかたないと、自分に言い聞かせて

獲物は少ないが帰ることにした。

そのとき、なんとなく前にマイマイカブリがいた場所が気になった。

「まあ、いないだろうけど寄って帰るか。」

哲也は少しだけ、そのあたりを見回ってから帰ることにした。

「ん?なんだあれは?」

いつも歩く落ち葉だらけの雑木林内の獣道。

その脇に何か違和感を感じ、哲也は立ち止まった。

カタツムリ?

大きなカタツムリが裏向きになっていて何か黒いものが動いて見える。

哲也は網をかまえてそーっと近づいた。

「マイマイカブリだ!」

マイマイカブリがまさにカタツムリの中に頭をつっこんでいた。

哲也はコイツの素早さを知っている。

気づかれて走られれば、また取り逃がすだろう。

慎重に音を立てないように近づき、網の射程圏内に入った瞬間!

シュッと一振り。

カタツムリごと網をかぶせた。

網の中で、異変を感じたそいつはカラから頭を引き抜き走り出す。

しかし、周りは網で囲まれている。

哲也は急いで網の中のマイマイカブリをつかんだ。

「とれた!」

喜んだのもつかの間・・・。

「うわっ、くさい!」

あまりのにおいに、驚いて手を放してしまった。

そしてそのとき、地面に押さえつけていた網に隙間ができた。

そいつはそのすきを逃さず、あっという間に網の外に出てしまった。

そして呆然と立ちすくんだ哲也から離れるように走り去った。

また捕獲失敗だ・・・・。

帰ってから、いろいろ調べると・・・。

おしりから何かにおいのある液体を噴射するらしい。

完全にやられた・・・。

くやしかった。

さらに言うと、そのにおいは手を少々洗ってもとれなかった・・・・。

かなりいやな思いをした。

無知であることが、どれだけ自分にとってマイナスかを思い知らされた。

二度のチャンスを逃し、次こそは失敗しないと心に決めた。

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