竹べらなんかでどうするのか・・・。
「ちょっとごめんね・・・。」
哲也はだんごの一つを穴から取り出した。
メスに申し訳ないとは思ったが、好奇心が勝った。
哲也は竹べらでそーっとそのだんごをうすく切った。
何もない。
もう少し切った。
するとなんとなく小さな空洞があるように感じた。
そこから慎重にその空洞のあたりの糞をうすく取り除いた。
すると・・・。
白くて楕円形のものが現れた!
間違いない!卵だ!
「やった!見つけた!」
哲也は卵を見つけた感動で思わず声を出した。
本当に糞の中に卵を産んでいるのだ。
もしかすると、全部糞のだんごを開けてみれば、すでに幼虫になっているものもあるかもしれない。
しかし、さすがにそこまでは・・・。
がんばってだんごをつくり、産卵し、その穴にとどまって番をしているメスに申し訳ない。
哲也は、竹べらにくっついた糞をだんごに戻して、卵を隠してから
それをまた穴に戻した。
この愛情たっぷりの糞玉の中で、卵は幼虫になり、幼虫は蛹になり、そして羽化して
また新しい命を生み出すのだろう。
そう考えると、哲也はなにか言葉では言い表せない感情に包まれた。
こうして命がつながっていくのだと感じた。
感動のダイコクコガネとの出会い。
オスもメスも見ることができ、さらに卵も見つけた。
こんなに嬉しいことはない。
しかし、欲深い哲也はこれで満足はしていなかった。
ほかにも糞虫のなかまはいるはずだし、そもそもふんころがしてない!
というわけで、哲也はそこから数メートル離れた別の糞のところに移動することにした。