哲也なりに考えてしかけたワナ。
思惑通りオサムシはいるのか?
哲也はまずイモムシの入ったビンに向かった。
そーっとのぞくと・・・。
そこはアリとハエの温床だった。
おそらくアリが群れでイモムシの体中をかみまくり、
そこから体液が漏れて、そのにおいでハエがたかったのだと思う。
「うっ・・・。」
哲也は思わず声を出した。
おぞましい状況だ。
「ダメだったか・・・・。」
ため息交じりに言うと、哲也は次のビンに向かった。
次は牛脂を入れたビンだ。
掃除屋と言われる虫たちなら、絶対にくるはずだ!においもするし。
と期待をこめてビンをのぞいた。
「おっ、なんかいる!」
白っぽい牛脂だけではなく、黒っぽいものが見えた。
哲也はその黒いものを確認した。
しかし・・・。
「シデムシだ・・・。」
オサムシと並んで、掃除屋の異名が高いシデムシが何匹かいた。
交尾してるものもいた。
アリやハエもいる。
すべて確認はしていないがゴミムシのなかまもいるようだ。
しかし、残念ながらオサムシはいない。
哲也はシデムシはそれほど好きではなかったので
「いやな虫しかとれないやん・・・。」
とグチを言ってみせた。
(幼い子供が考えたワナだ。そうそううまくいかないか・・・。)
哲也はがっくりしながら、自分に言い聞かせた。
3つのうちすでに2つでダメだったのだ。
家を出るときの、期待に打ち震えた哲也はもういない。
あきらめと失意に満ちた哲也はもう期待もせず、最後の1本のほうへと向かっていった。