ハンミョウって本当に美しい!
はじめて図鑑で見たときに、どうしてもつかまえたい!と思った虫の筆頭だ。
色が美しいうえに、するどいアゴを持っている。
容姿のみならずその習性もおもしろい。
図鑑によると、人の歩く前を飛びながら進むので「ミチオシエ」と呼んだりするらしい。
そして、山に何度か入るようになってから
その名の所以を知る機会はすぐにやってきた。
ハンミョウを見ることができたのだ。
始めてみたときは感動した。
やはりなんといってもあの美しさ。
まばゆいばかりの光で、神聖な感じさえ覚えた。
そしてそいつは、図鑑にあるように確かに哲也の目の前を、哲也の先に行くように進んだ。
ミチオシエと名付けた人に拍手をあげたい。
哲也が山に入るのは、クワガタやカブトムシをはじめ、いろんな昆虫をつかまえたり、観察したりするためであった。
哲也がよく行っていたクワガタ採集の場所に行く途中に、数100mほどの砂利道があり、その両サイドは道に沿った細長い草むらであった。草むらの奥には固い土の原っぱがあり、哲也はその原っぱを横目に、意気揚々とこれからとれる!かもしれないクワガタに思いを馳せながら歩いていくのが常であった。
その砂利道が、実はハンミョウをよく見る場所であった。
最初はたまたまこの道で見かけただけだと思っていたが、実際には林の中とかよりむしろこの砂利道で見ることが多かった。
この砂利道のそばの固い土の原っぱの奥には小さな用水路があった。
この用水路は、時々水生昆虫がいたり、小魚がいたりするので、そういうのをつかまえに来ることもあった。
そんなとき、ふと見ると用水路を作っているコンクリートの上をはっているハンミョウを見かけたこともある。
とにかく、このあたりはハンミョウが多かった。
逆に、ほかの場所ではハンミョウをあまり見つけることはなかった。
このことに気付いたとき、哲也にはある考えが浮かんだ。
もしかするとこのあたりはハンミョウに適した環境であり、発生の場所にもなっているのではないか?
そう思ったとき、哲也は行動に出ることにした。
このあたり一帯の探索である。
哲也はある日、大好きなクワガタとりもとりやめて、その調査に乗り出すことにした。
哲也にとって夏休みの一日は超貴重であった。
哲也は出された宿題のほとんどを、最初の数日で終わらせていた。
あとは日記とか、その日にできないものだけの状態にする。
漢字練習なんかは、急いで汚い字で書くので、おそらく提出時に怒られるだろう、
でも、夏の哲也はそんなことは考えられない。どうでもいい。
哲也にとっての夏休みは、虫取りと魚釣りの夏だった。
そして、いろんな場所で虫取りや釣りをしたい哲也にとって、一日は本当に大事だった。
一日行動を間違えば、行ける場所が減り、成果にも影響が出る。
その一日を調査にあてる・・・。
それほど哲也はハンミョウというものの生活に興味を持ったのだ。
いろんな道具をリュックに詰め込んだ。
明らかに普段の虫取りとは違う格好だ。
哲也はハンミョウの生活を暴いてやろうと意気込んでいた。
今年はクワガタの採集数が減るかもしれない。
でもそれよりも、ハンミョウのあの美しさがどうやって生み出されるのか?
それをどうしても知りたい!
たった一人の捜索隊は、ハンミョウの発生現場めがけ出発した。