4歳になった哲也は、衣装ケースによるカブトムシの飼育を開始! 約10頭ものカブトムシがいて、交尾してるもの、ケンカしてるもの、もぐって寝てるもの、様々である。 いつも賑やかで見るのが楽しかった。 ただ、前述の通り、図鑑の絵のとおりにやった飼い方と違い、深く腐葉土を入れ、さらに衣装ケースという透明度の低いもので飼育していることもあり、いちいちフタを開けないと見れないのだが・・・。 まあ、そのころの哲也にはそんなことはどうでもよく、王者カブトムシがほんの中ではなく、現実に目の前にいることが楽しかった。 ある日、メスが腐葉土からはい出てくるところを見た。 今までもぐってたんだな? と思いつつ見ていると、なんと目の前でポロリと卵を落とした。 「卵産んだ!」 哲也は驚いた。なにせ、もぐった土の中ではなく、土の上に普通にポロリと産み落としたのだ。 「すげー!」 哲也は大喜びだった。 もしかして、中にはまだ産んでるんじゃないだろうか・・・。 哲也はがまんしきれず、腐葉土を少し掘ってみた。 すると・・・。 なんとさっき見たのと同じ卵がいくつか見えた。 「やったー!産んでる!」 思わず声を上げた。 さらに掘ると小さな幼虫が顔を出した。 「すげー!幼虫もいる!」 哲也は興奮していた。図鑑の中でしか見たことのないカブトムシの卵や幼虫が目の前にある。 少なくとも来年はカブトムシを手に入れられなくても、ここで手に入る。 そう思うとうれしくてたまらなかった。 例の近所のにいちゃんから注意を受けていたことがある。 幼虫はあまり触らずなるべくほおっておくこと。 ふんが目立った時だけ、土を取り換えること。 5~6月くらいになると蛹や成虫になる準備を始めるので土を掘らないこと。 という内容であった。 頭では理解しているが、ようすがすごく気になった。 卵はどのくらいあるのか。 無事に幼虫になっているのか。 幼虫は大きくなっているのか。 なんだかんだ言って、少しだけといいながら、ほぼ毎日掘り返していた。 そして少し大きめの幼虫が出てくるとまたうれしくなった! そんなこんなで、秋の終わりごろまでほぼ毎日掘り返していた。 そのうち寒い冬になり、いつしか哲也はそのケースを放置していた。