カブトムシのオスとメス、コクワガタのメス、ノコギリクワガタのオスの4頭が虫かごに入った。 こんなにぎやかな状態は初めてだった。 毎日、見るのが楽しい。 ただ、やはりカブトムシが強く、クワガタたちはえさ場から追いやられ、肩身の狭い感じだった。 しかし、小さな哲也にはそんなところに気遣うこともなく 毎日エサやったり、ときどき手に乗せて楽しんだりした。 ある日、保育園から帰ると、カブトムシのオスとメスが止まり木で交尾していた。 図鑑でこれが交尾であることは知っていた。 そこで哲也は考えた。 もしかしてこれって卵産むんじゃないのか!? 図鑑や本を読み返し、カブトムシの産卵について再確認した。 交尾したあとにメスが卵を産むのは間違いない様だ。 ただ、この状態で産卵ができるのか? という問題があるのだが、若干3才ほどの哲也がそんなことを考えはしない。 交尾したから産むものだと思っていた。 ただ、図鑑の最後にある「カブトムシの飼い方」というページを見ると カブトムシのオスとメスを1頭ずつ入れて、ほかのカブトムシやほかの虫を入れないと書いてあった。 ケンカなどをして、産卵がうまくいかないらしい。 それを父に言うと、もう一つ虫かごを用意してくれるという。 知り合いの家で、もう子供が大きくなり、虫かごがいらなくなったらしい。 というわけで、父はその虫かごをもらってきてくれた。 その虫かごは、もともと持ってるものより少し大きかった。 哲也はこれまでの虫かごにクワガタたちを残し 大きな虫かごにカブトムシのつがいを入れた。 その日の夜、やけに騒がしいと思ったら、また交尾していた。 これならうまくいく! 哲也はそう思った。