哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ②篠栗渓流ヤマメとの出会い その2

このコースを最初に選んだのにはわけがあった。

88か所もある霊場巡り。

それらは篠栗中にちらばっており、総移動距離はなかなかのものだ。

しかも、山中にあるものも多く、小学生で車を運転できない哲也にとってはなかなか大変な計画だ。

最初のコースはまず、家から一番遠いところ。

そして、そこがかなりの山奥で行くのはかなり大変。

それなのにその目的地周辺には88か所のうち2、3か所しか霊場がない。

道中数か所回る予定だが、それでも最も効率が悪いコースなのだ。

哲也は最初に苦労して、あとから楽する作戦をとった。

途中まで多々良川にそって登っていくが、ある地点から山のほうに向かう。

しばらく行くと、小さな川沿いを進むことになる。

これは多々良川に流れ込む支流の一つだ。

途中からかなり勾配がきつくなる。

ただ、すごくきれいな川なので見るだけでもいやされる。

ある地点で、以前釣りをしたことがあるが

本当に水がきれいで、オイカワやアブラハヤをたくさん釣った記憶がある。

「また今度釣りにでも来ようか・・・。」

などと言いながら哲也は前へと進む。

このころにはさすがに自転車は降りて押していた。

汗が吹き出す。

時々ばあちゃんが入れてくれた水筒のお茶を飲みながら進む。

しんどいが、準備してくれたばあちゃんを思うと元気が出た。

自宅から5kmほど進んだところだろうか。

ここで少しだけ大きな通りに出る。

ここからは峠になっていて、ひたすら登りだ。

めちゃくちゃきつい。

でも、帰りは相当楽だろう。

そう言い聞かせて進む。

この大きな通りを3kmほど進まなければならない。

息も絶え絶えに、必死に進み、ちょっと平らになったら自転車をこいで、また勾配がきつくなったら降りてを繰り返した。

もうしんどい・・・。

そう思っていると、小さな橋が見えた。木陰もある。

このあとは大通りからこの橋を渡って細い道へと入る。

少し広いスペースもあり、哲也は休憩しようと考えた。

11時を回っていたので、そろそろ腹も減ってきた。

「ここでご飯食べよう。」

哲也は自転車をとめ、荷物をおろした。

座り込んでおにぎりをほおばった。

ばあちゃん!ありがとう!

めっちゃおいしくて、思わず感謝した。

いつも哲也のわがままで、朝から苦労かけてるなぁと思うと申し訳なかった。

食べ終わり、また進もうと思ったが、ちょっと川が気になった。

哲也は橋の上から川をのぞきこんだ。

「えっ!?」

哲也は絶句した。こんな光景があり得るのか?

なんか現実か夢かわからなくなった。

その川は幅は6~7mといったところか。

そんなに広い川ではない。

そして浅い。

深いところでも30cmほどに見えた。

水がきれいで、底もはっきり見える。

そんな中、20cmにも満たない大きさの魚が何匹も泳いでいた。

その魚が問題なのだ。

上からではあったが、からだに見える大きな斑点。

間違いない。

「ヤマメだ!」

哲也はやっと我に返り、目の前の光景が現実であることを確認した。

篠栗にヤマメなんかいないはず。

そう思っていたのに、目の前にたくさんいる。

信じがたいが事実。

哲也はからだの奥でなにか湧き上がるものを感じた。

もちろんそれは

「釣りたい!」

という感情だった。

この日、参拝が目的だった哲也は、当然釣りや魚を捕る道具なんかは持ってきていない。

とりあえずこの場所をインプットし、目的地に向かった。

参拝を終えて、帰りにもここを通った。

やはりヤマメたちがいる。夢のような光景だ。

哲也は名残惜しさを感じつつ、この日は家に帰った。

もちろんそれからの哲也は

「あのヤマメをどう攻略するか?」

と常に考える毎日であった。

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