哲也昆虫記 ~ファーブルになりたかった少年~ ⑫ハンミョウ釣り その4

哲也はいろんな虫や生き物を与えた。

こいつらいろんなものを食う!

アリやハエなどの小さな昆虫。

コオロギのような大き目の昆虫も食べる。

野外で見たように、カエルも食う。

哲也は日々、いろいろ準備して与え続けた。

大変だったが、食べる様子を見るのは楽しかった。

しかし、しばらくすると穴の中に彼らが見えなくなった。

死んだのか・・・・。

哲也はその穴の一つをそーっと掘ってみた。

なんと!蛹になっているではないか!

「これが蛹か!すごい!」

しかし、その蛹は扱い方がわからず

しばらくそのまま地面に置いておいたらダメになってしまった・・・・。

申し訳ないことをしたなぁと思った。

だが、ほかの穴の幼虫は掘り返してないので

もしかすると蛹になっているのかもしれない。

哲也は事故を防ぐため、これ以上掘り返すのはしなかった。

そのうち冬が来て、哲也はそのケースを暗いところに置いたままにしておいた。

5月末ごろだっただろうか・・・。

ふとそのケースのことを思いだし、見てみることにした。

とりあえず異変はない。

いてもたってもいられず、哲也はまた穴の一つを掘ることにした。

蛹の期間がそんなに長いとは思えない。

羽化して、待機している成虫を見れるのではないか?と思ったからである。

ゆっくりと穴のまわりを掘っていく。

するとなんか輝くものが見えた。

「もしかして・・・。」

哲也は慎重に掘った。

すると、前足で土をかきわけるように

あの美しい成虫が顔を出した。

「やったー!」

哲也は感動した。

いろんな思いがこみあげてくる。

ミチオシエと呼ばれるとおり、目の前を飛びながら進むハンミョウ。

美しい姿でえさを探し回るように、あちこちはいまわるハンミョウ。

飼育してもなかなか長生きさせることができなかったハンミョウ。

あらゆる場面を思い出していく。

そうして昨年の夏、ハンミョウの幼虫と出会い、そして釣り上げ、飼育を始めた。

その結果、サナギをダメにするという失敗もしたが、

今まさにその集大成である成虫の作出に成功したのである。

哲也はこらえきれす、全部の穴のそばを掘った。

そして3頭の成虫を掘りだした。

その美しさはいくらながめても飽きなかった。

このときの成虫の姿は、今も哲也の脳裏にやきついている。

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