哲也昆虫記 ~クワガタの章~① ノコギリクワガタ その5

ついに水牛を手に入れた哲也・・・。

その後も新しい場所を見つけたり、様々な最終手段を覚えたりして

毎年、何頭かはとれるようになってきた。

当然だが、哲也の採集力のアップによりほかのクワガタやカブトムシの採集数も増えてきた。

しかし・・・。子供の欲というのは・・・。

それでももっととりたいと思うのが子供だ。

さらに言えば、夏だけでは物足りない・・・。

冬にもクワガタをとりたいと思い始めたのだ。

そんなある日、父と知り合いの家の庭の整備の作業を手伝いに行くことになった。

まあ、手伝いと言っても、父は作業を手伝うのだが・・・。

哲也は戦力にはならず、庭で遊びまわるために行くのだ。

この日は腐って倒れた木の根を掘り起こして、取り出したあとに花壇をつくる計画らしい。

たまにこの家に行くのだが、庭が広くて、いろんな木々があり哲也にとっては格好の遊び場だった。

もちろん暖かい時期は虫とりもできる。

今は冬なので虫とりはできないだろうが、庭を探検するだけでもそのころの哲也には大冒険なのだ。

父とおじさんが作業しているのをしり目に、悠々と遊んでいたのだが・・・。

「哲也ー!来てごらん。」

突然父に呼ばれた。非力な哲也を屈強な大人二人があてにするはずもないのだが・・・。

「なにー?」

聞きながら哲也は走ってそこへ向かった。

何の木かはわからないが、とにかく朽ちた木の根を掘り起こしているところだった。

哲也が近くまで来ると父が

「そこばちょっと見てん。」

と指さした。

「あっ!幼虫!」

そう、そこには何かの幼虫がいたのだ。

確信はなかったが、哲也はそれがクワガタではないかと思った。

なぜなら図鑑で見たものと似ているからだ。

木の中にいるのもクワガタと推理するに至った理由だ。

小さいが、幼虫が2頭ほど見える。

父とおじさんはその木を掘りだして、脇に置いた。

その根はかなり朽ちてて、子供でも割れそうなほど、木独特の堅さを失っていた。

おじさんがナタを一つ持ってきた。子供でも使えそうな小さなナタだ。

「ほれ、これで割ってみてん。」

「ありがとう!」

哲也は受け取るとまずは見えていた幼虫を回収した。

それからナタでその根を崩してみた。

するとなんと!部屋があってコクワガタの成虫が出てきたのだ。

「クワガタがおったー!」

哲也は歓喜の声を上げ、二人に知らせた。

二人は満足そうに笑ってこっちを見た。

結局哲也は、ここでクワガタの成虫数頭と幼虫数頭を手に入れることができた。

成虫はケースで冬越しさせ、幼虫は本で見たように空き瓶に広葉樹のオガをしきつめて飼育した。

春にはそれらの幼虫はコクワガタとして外に出てきた。

幼虫飼育に成功した哲也は、やはりどうしても幼虫を山で見つけたくなった。

冬のある日、哲也は山に入った。夏と違って寂しいが、草は枯れてるし木々の葉が落ちて見通しもよく入りやすい。

何度か探索していくうちに、ついに哲也はその庭で見たような、朽ちた倒木を見つけた。

「これとかよさそうばい・・・。」

哲也はナタでその倒木を削っていった。

しばらくすると・・・。

「いたー!」

幼虫を見つけた。

しかも、この前見たコクワガタの幼虫たちとは全然違う大きさの幼虫だった。

「でけー!」

哲也は思わず叫んだ。

もちろんこの幼虫をとり、哲也はこれを飼育することにした。

食べていた木くずといっしょにこの幼虫を容器に入れて持ちかえった。

「ばあちゃん!なんかビンある?」

そういうとばあちゃんは

「こげんとでよかとか?」

と、コーヒーのびんをとりだした。

「うん。これでよかよ。ありがとう」

哲也はびんを受け取った。

店で広葉樹のマットを買ってきた。

哲也はそのマットをびんに入れて、持ち帰った木くずもその中に入れた。

そのあと、その大きな幼虫を入れてフタをした。

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