Category: 哲也の福岡一周釣り行脚~三平にあこがれた少年~

哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ④筑後川のナマズ その4

ある休日の朝早く・・・。 「哲也!起きろ!」 という父の声で目が覚めた。 休みの日に起こされるとか、ほとんど経験したことがなかった。 なんだ? と思っていたら 「はよ着替えて出かけるけん、準備しろ!」 と言う。 わけがわからず 「どっか行くと?」 と聞くが、何も言わない。 とりあえず着替えると 「釣りに行くけん、道具もってこい。」 と言われた。 釣り?やった! しかし、どこに何を釣りに行くか言われないので、何の準備すればいいかわからなかった。 「何釣るん?道具どれもっていけばいいかわからんっちゃけど。」 「お前、なんかルアーとかいうの持っとったろうが。」 父はルアー釣りはしないはずだがそういうので、とりあえずルアー釣りの用意をした。 終えると父は車に向かった。 わけわからないまま車に乗った。 こういうときの父は 「どこに行きようと?」 とか聞いてもどうせ答えない。 哲也は行き先を聞くことをあきらめ、黙って座った。 車の中では、学校のこととか、友達のこととか話したが 行き先の話は一切しないまま車はどんどん進んでいく。 1時間半ほど経っただろうか? 朝早く出たので、まだ時間は9時にもなっていない。 父は車をとめた。 道を覚えてはいなかったが、途中から大きな川のそばを通ったのでなんとなく察した。 「筑後川?」 「そうたい。」 「なんで?」 「この前、行きたいって言いよったろうが。」 「うん!ありがとう!」 こんなうれしいことはない。 父がわざわざ少ない休みを使って、哲也を筑後川まで連れてきてくれたのだ。 父は、例によっていつものハヤ釣りのしかけしか持ってきていない。 ここでもハヤを釣るらしい。今晩のおかずにはこまらないだろう。 哲也はルアー釣りの準備をした。 そして、父が釣り座をかまえたところから少し離れた場所でルアーを投げ始めた。 本では、ミノーやワーム、スピナーでナマズを釣ってる写真を見た。 当然、それを真似してそれらを試していく。 しかし、何度投げても、どれを投げても何もヒットしない。 離れたところにいる父をふと見ると、オイカワかなんかだと思うが、小さな魚を釣り上げてはビクに入れている。 父は思惑通り、今晩の空揚げの材料を手に入れている。 しかし、哲也はなんの成果もあげていない。 ただ時間と体力を浪費していた。 ふう・・・。…

哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ④筑後川のナマズ その3

釣りに関する本を読んでると、めちゃくちゃ釣りに行きたくなるし、すごい魚釣りたくなるし、いい道具がほしくなる・・・。 哲也はその本の中で、ナマズがルアーでも釣れることを知った。 ブラックバス釣りのため、いくつかルアーを手に入れた哲也ではあったが、残念ながらナマズの宝庫である多々良川でルアーを試すのはためらわれた。 そもそも川が大きくない。 今は護岸工事されているのかもしれないが、当時はほぼ手付かずの状態で、狭い範囲に草や石、岩、倒木などが散乱いている。 おそらくルアーを投げて、巻いてを繰り返すような動作はしづらいだろう。 本の中のナマズに、哲也はあこがれつつもあきらめるしかなかった。 まあ、ミミズもっていけば釣れるし、というのもあった。 ある日、父が運転手の仕事で佐賀の方に向かうことがあった。 前述のとおり、長距離の運転手をしていた父は、遠い県外までトラックを走らせ、数日帰ってこないということはザラだった。 しかし、時々日帰りの仕事もあった。 そんなときで、哲也が学校休みの時は、たまについていったものだった。 この日も哲也はついていくことにした。 父がトラックを運転し、遊びに行くわけでもないのになぜかついいてくのが好きだった。 なかなか会えないというのもあったし、何よりいろんな場所でいろんな発見をすることができた。 父が現場について、荷物の積み下ろしをしてる間は、哲也は一人である。 しかし、その作業場の近くは、海だったり林だったり川だったりと、結構自然豊かな場所が多かった。 そんな場所で一人で遊びまわって、父の作業を待つ。 これはこれで楽しい時間だった。 行きの道中、父といろんな話をするのも楽しかった。 まあ、帰りは大体疲れて寝るんだが・・・。 今回の目的地は佐賀の現場。 佐賀の現場は何度か行ったことあるが、今回は哲也が初めて行くところらしい。 哲也は楽しみで仕方なかった。 例によって、話しながら向かってるうちに、目的地に着いた。 哲也はトラックから降りるまえから、ワクワクが止まらなかった。 でかい!広い! なんと、現場は佐賀と福岡の県境を流れる筑後川のそばだったのだ! もちろん、釣りの道具を持ってきたりはしてないので、釣りしたりはできないが見て回るだけでも楽しそうだ。 河原には虫がいるだろうし、当然川にはいろんな生き物がいるだろう。 それにしてもでかい川だ。 哲也の家のそばの多々良川は、リール竿で投げると簡単に向こう岸まで飛ばせる幅しかない。 筑後川のスケールときたら・・・。 リールで対岸に?いやいや、半分も届かない! すごい川幅だ。 哲也は河原を散策した。 バッタの仲間がたくさんいた。 それらを追うのも楽しかったが、せっかく川があるのに何も見れないのは寂しい。 しかし、岸から見ても深そうだしあまり魚を見ることはできない。 そのとき哲也はふと見上げて思いついた。 近くに橋がある。 「よし!あの橋に行って、上から見てみよう。」 哲也は駆け足で河原の土手を登り、道路に出て橋に向かった。 そして川を見下ろす。 「そうそう見えないか・・・。深そうだもんなぁ・・・。」 川が深いためか、底が見えない。ゆえに泳いでる魚がいるかどうかも見えない。 「ふうっ・・・。」 大きくため息をついた。残念だ。 そう思いつつ、とぼとぼとあきらめ加減で、そのまま橋を渡り切ろうとした。 かなり長い橋だ。…

哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ④筑後川のナマズ その2

哲也はお小遣いを取り出した。 ブタの貯金箱に入っていたお金だ。 そこから数百円を取り出すと少し離れたところにある釣り具屋さんに向かった。 釣り具屋さんといっても、ガッツリとした釣り具専門店ではなく おばちゃんがやってる小さな駄菓子屋兼釣り具屋である。 哲也が買いたかったのは針と糸。 今父にもらって使っているものより少し太いものが欲しかったのだ。 ここで哲也は針と糸を買うと、走って家に戻った。 早く仕掛けを作りたかった。 父に結び方を習ったが、最初はなかなかうまくいかず苦戦した。 小学校低学年で、かつ不器用な哲也には糸を結ぶのは大変だった。 それでもがんばって覚えようとしたのは、誰にも頼らず釣りがしたいからだ。 そうして、なんとか仕掛けをつくることができた。 延べ竿にテグス、そしてゴム管にウキ、ヨリモドシでテグスとハリスをつないだ。 途中にかみつぶしおもりをつけて完成。 いたってシンプルなしかけだ。 休みの日、哲也はそれをもって、また多々良川にでかけた。 えさはミミズ。 実は前の日、雨が降っていたため、水は茶色ににごっていた。 そんなことはおかまいなく、哲也は釣り座につくとすぐにエサをつけてしかけを投げた。 本当に入れてすぐだった。 ウキが一気に深いところまで沈んでいった。 とっさのことにびっくりして、慌てて竿をギュッと握りなおした。 すると、ものすごい力で竿先が水の中に引き込まれようとするのがわかった。 「なんだ、なんだ!?」 哲也はとにかく慌てて、なかなか態勢が整わなかったが、グングンと引っ張られてやっと我に返り、なんとかグッと竿を立てることができた。 濁った水でウキが見えない。 何かがかかっているのは間違いないが、とにかく深いところを右に左にと動き回るので確認もできない。 何より、ヒキが強すぎて竿を立てるので精いっぱいであった。 「やばいやばい!」 哲也は手にしびれを感じ、そう叫んだ。 なんとかふんばって竿を立てつつ、川岸から離れるよう後ろに下がる。 だんだんそいつは岸に寄ってきた。 そして次の瞬間! バシャッ! 魚体が翻り、水面付近で暴れた。 「ナマズだ!」 濁っている水の中だが、はっきりと見えた。 大きなナマズが暴れているのだ。 太い糸にしておいてよかった・・・。 今までの糸なら切れてたかもしれない・・・。 そんなことを考えながら、哲也はとにかくナマズの動きに合わせて体の向きを変え、疲れるのを待った。 しばらくやりとりが続いたあと、ついにナマズは疲れて浮いてきた。 哲也は父がフナを釣り上げたときに聞いていたことがある。 「大きいのかかったのに、なんでそげん簡単に上げれると?」 すると父は 「とにかく、顔を水から出してしまえばよかったい。そしたらパクパクして動かんくなるけん。」 哲也はその言葉を思い出し、浮いてきたナマズの顔が水面から出るように竿を操作7した。 あのひげが生えて、なんでものみこめそうな大きな口がついに水面から出てきた。 哲也はその状態を維持しながらナマズを岸に寄せた。…

哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ④筑後川のナマズ その1

ナマズは哲也の大好きな魚の一つである。 哲也の住んでいた家の近くには多々良川という川がある。 今では護岸工事が進み、魚が住めない川になってしまってるらしいが・・・。 哲也の少年時代、生き物の宝庫であったその川は、貴重な遊び場であった。 水生昆虫の種類が豊富。サワガニやエビのなかまもいたし、ザリガニもいた。 カエルやスッポンなどもいた。 魚は種類が豊富で ハヤ、オイカワ、ムギツク、フナ、コイ、カマツカ、ドンコ、ドジョウ、ヨツメ、ヨシノボリなどたくさんの魚をとることができた。 ナマズももちろんいた。 コイをのぞけば、ひときわ大きい魚で、ヒゲもありかっこいい。 ということで大好きな魚であった。 まだ小さく、釣りをやってなかったころは ナマズといえば手づかみでとる魚だった。 シャツもズボンもビショビショにして川に入り 大きな石の下に手を入れるとほとんどの石の下でナマズが隠れていた。 最初は怖さや、あのぬるっとした感触にたまらず手をはなし、逃げられるばかりだった。 しかし慣れてくると、ナマズがいることを感じ取ったら、いきなりつかまず両手を石の下に入れてどちらが頭かを判断することを心掛けた。 ナマズのからだはご存じのように、全体がぬるぬるしていてつかみにくい。 しかし頭だけはつかみやすい部分がある。 口とエラだ。 捕まえるコツはいち早く頭側がどこにあるかを判断し、口かエラに指をつっこむことだ。 少々痛いが慣れてくる。 こうやって20cmほどのナマズをつかまえては、得意げに持ち帰ったものだ。 時には30cm級の大型もいる。 そんなのがとれたときは、眠れないほどうれしかったのを覚えている。 父はそれほど釣り好きではなかったが、ハヤ釣りが好きで、時々でかけていた。 いや、正確に言うとハヤを釣るのが好きなのではなかったように思う。 どちらかというと、ハヤを釣って食べるのが好きだったんだと思う。 そんな父が、哲也が小学生になったのを機に、釣りを教えてくれると言った。 竿も短めの竿をもらった。 父が持ってた道具は、ハヤを釣るのに十分という感じのものだけだった。 延べ竿に細い糸、ウキとよりもどしとかみつぶしおもり。そして小さな針。 知り合いと海なんかに出かけるとときは、友人に借りてたようだ。 とにかく、哲也にとって初めて自分の釣り竿が手に入った。 父に教わったとおりにエサをつけ、しかけを投げ、そしてウキのうごきをよく見て合わせる。 最初はエサとられてばかりだったが、だんだんできるようになってきた。 当然、そうするうちに楽しくなってきた。 父の釣りでは、エサは家の軒先でアシナガバチの巣からハチの幼虫をとってきたり、ねりえさを使ったりが主だった。 ねりえさもなく、ハチの子もとれなかったとき、父は畑でミミズを掘って持っていくことにした。 哲也もミミズ掘りを手伝い、一緒にでかけた。 ハヤは口が小さいので、ミミズをちぎって使う。 父の竿にあたりがきた。あわせるとすごいヒキ。 父は慎重にゆっくりとそいつを上げた。 15cmくらいのフナがかかったのだ。 糸も細く、針も小さいのにそのフナを上げたのを見て、びっくりした。 なるほど、この仕掛けでもこんなのが釣れるのか。 その日以来、哲也はミミズをよく持っていくようになった。 ときどきフナやヨツメ、カマツカが釣れた。 哲也はどちらかというと、ハヤやオイカワばかり釣れるより いろんな種類を釣る方が楽しいと感じた。…

連載予告編!ついに復活!哲也少年の思い出がまた・・・。

かなり長いことお休みしてました・・・。 いや忙しくて・・・。ホントに・・・・。 哲也少年の熱い!日々がよみがえる! まだまだ忙しいけど 動かないとやれないので 予告することで自分を奮い立たせる作戦です! ①哲也の福岡一周釣り行脚新シリーズスタート! なんの魚が登場するのか!?乞うご期待! ちなみにキャッチアップ画像はブラックバス編のときのものです。→コチラ ②哲也昆虫記新シリーズスタート! なんの昆虫が出るか!?乞うご期待! ③新カテゴリー 哲也昆虫記外伝スタート! クワガタに特化した昆虫記です。 ④新カテゴリー 哲也少年と父スタート! 今は亡き、父を偲んで 個性豊かすぎ!破天荒!な父と そんな父に育てられたのにマトモに育った?哲也少年のエピソードを紡ぎます。 一度に全部どんどん書けないのでゆっくりやります。ご了承ください。 とにかくこれからも続く「哲也少年」の活躍。お見逃しなく!

哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ③初めてのルアー・初めてのブラックバス その3

すさまじい状況だった。 なんと2投目もストライク! 安物だったが、ポッパーがすさまじい威力を発揮! 2匹目は最初のより少し小さかったが、ものすごいヒキで超おもしろかった。 また数回投げると、またヒット! 「ほとんど入れ食いやん!」 哲也は興奮状態だった。 しかし、3匹目を上げたあたりでポッパーが着水してもなんの反応もなくなった。 哲也は決心したように、ルアーをミノーに替えた。 ※ミノー=小魚の形をしたルアー。水中にもぐるが、あまり深くはもぐらず、表層を攻めるときに使うルアーである。 そして数回投げるとまたヒット! トップウォーターと違い、食らいつく瞬間は見れないが、ルアーを〔動かしていたら、急にズシリと重くなる感覚が腕にダイレクトに伝わってくる。これはこれで忘れられない感覚だ。 これから立て続けにまた数匹のバスを釣り上げた。 次はスプーンを試す。 ※スプーン=反り返った金属板でつくられたルアー。水中で水の抵抗を受けて不規則に動いて魚を誘う。もともと、釣り師が湖にスプーンを誤って落としたところ、それに魚がかみついたというエピソードから考案されたものらしい。 スプーンでも立て続けにヒットした。 ただ、このころから表層に浮かぶバスの姿はほとんど見えなくなり、ヒットするまでに投げる回数が多くなり、ヒットするバスのサイズもだんだん小さくなった。 大物が警戒心を強め始めたのかもしれない。 ついに、何もヒットしなくなった。 ここでクランクベイトを試すも空振り。再びポッパーやミノーを使ってもダメだった。 ※クランクベイト=ずんぐりした形で深くもぐるタイプのルアー。底を這うように進むので水温が低い時や、日差しが強すぎるときなんかにオススメ。 潮時か・・・。 しかし、おもしろいほど釣れた。 途中、初めに釣った32cmを超える35cmを釣り上げ、これがこの日一番の大物となった。 小さいものは15cmほどのものがかかった。 初心者の初挑戦はなんと!たった2時間ほどで16匹のバスを釣り上げるというまさにビギナーズラックの典型みたいな結果となった。 当然、この日さらにルアーの魅力に取りつかれた。 初挑戦は素晴らしい成績だったが・・・。 調子に乗り、次の休みも行ってみたが、なんとボウズ。 その後は、ボウズだったり、ガンガン釣れたりと、日によってまちまちな釣果となるのだが・・・・。 実はこの初日の16匹が、未だに生涯のルアー釣りの最多記録である。 ブラックバス。 ジャンプにエラ洗い、テールウォーク。 そして深くグングンもぐり、ジグザグに泳ぐなど・・・。 多彩な技で、ファイトする者を魅了する魚の代表ではないだろうか? 社会人になり、忙しくて釣りになかなか行けなくなったある日、道具一式を知り合いの子にあげてしまい、今はルアータックルを持っていない。 記事書いてたら、思い出してまたルアー一式そろえたくなってきた・・・。

哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ③初めてのルアー・初めてのブラックバス その2

哲也は早起きして自転車をこぎ、三段池の前に立っていた。 いつもは2段目と3段目の間で釣るのだが、今日は1段目と2段目の間に来ていた。 実は、近所の兄ちゃんとの会話で 「三段池に行ってみるんか?」 「うん!」 「それなら1段目と2段目の間の道の入り方わかる?」 「わかるよ。」 「じゃあ、そこの道から2段目のほうに降りてすぐのワンドがいいよ。」 ※ワンド=入り江 「ありがとう!そこに行ってみる!」 と、こういうやりとりがあった。 それで、哲也は今その場所に来ているのだ。 荷物を岸に置き、準備しようとしたときである。 なんか沖のほうで魚影が見えたと思い、凝視した。 「うわぁ・・・。」 哲也は声を漏らした。 なんと、岸から数メートル~10メートルくらいの範囲にいくつもの魚影が見えたのだ。 そのフォルムはコイでもフナでもない。 「ブラックバス!?」 哲也は心臓がバクバクなるのを感じた。 初めてのルアーフィッシング。 その瞬間に、こんな場面に出くわすとは・・・・。 だがどうだろう? 大人たちと釣りに行くことがよくあった哲也はよく聞かされていたんだが 「見えてる魚は釣れんけんなぁ・・・。」 という言葉を思い出す。 そしてフナやコイが表層に浮いてて見えてるとき 狙ってエサを投げたりしても釣れたためしがなかった。 「これって幸運?不運?」 たくさんの姿を見ても釣れなきゃ意味がない。 ましてやルアー初挑戦の素人。 複雑だったが、考えてても始まらない。 「とにかくやってみるか。」 哲也は準備を整えた。 ルアーを何にするか迷ったが 表層に浮いてるのを見たのでトップウォーターを使うことにした。 ※トップウォーター=ルアーの分類の中で、表層で水しぶきや音を立てることで魚を誘引するタイプのもの。水にもぐったりしない。口にくぼみがあり、水を吐くようなアクションをするポッパー、プロペラがまわるスウィッシャー、複雑な動きをするペンシルベイト、カエルに似せたフロッグなどがある。 哲也はポッパーをとりつけた。数少ないルアーの中の唯一のトップウォータータイプだ。 記念すべき第1投! シュルシュルと糸が出ていき、やがてポチャンと着水した。 そしてリールを巻く前にクイッと竿先をしならせた瞬間だった! バシャッ! 大きな音とともに水面が破裂した。 一瞬何が起こったかわからない。 しかし、次の瞬間魚体が躍り出てルアーに上からかみついた。 ジャバン! そのままその魚体はルアーを咥え込み、水中にもぐりこんだ。 そしてその振動が手元に伝わったかと思うと、糸フケをとろうとしていたラインがいつの間にかピンッと張って、そのまま竿が大きく弓のように曲がった。 「かかった!」 哲也は思わず叫んだ。…

哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ③初めてのルアー・初めてのブラックバス その1

小さなころから魚釣りや魚とりをしてきた哲也だったが、小学生の高学年までブラックバスのことを知らなかった。 その衝撃の出会いは、哲也がよく行く三段池。 哲也はいつものように、吸い込み仕掛けでコイやフナを狙っていた。 竿に取り付けた鈴が鳴らないか?と竿先を見たり、空を見上げながら寝転んでみたり・・・。 これはいつもと変わらぬ哲也の行動であった。 そんなとき、おそらく中学生であろうか? やけに短いリール竿を肩にかつぎ、リュックを背負い、歩いている男の子が哲也に近づいてきた。 「釣れる?」 ふいに聞かれ、一瞬びっくりしたが 「いえ、釣れません・・・。」 そう答えた。 「がんばって!」 そういうと彼はそのまま歩いていく。 そこから20mほど離れたところで彼は釣りを始めた。 哲也はなんとなく彼が気になり、ぼーっと見ていた。 「変わった釣り方だなぁ・・・。」 哲也は彼のようすを見ていた。 彼は、竿の先に何かカラフルな魚のような形をしたものをぶらさげて、それをリールで池に向かって投げていた。 すると、すぐにリールを巻き始める。 竿を上下左右に振ったりしながら、巻き取っていく。 手元まできたら今度は少し違う方向に投げる。 投げたら、また巻き始める。 哲也はリールを使う釣りは、吸い込み釣りか投げ釣りしかしたことがない。 竿は彼のものよりゴツくて長いし、エサを投げ込んだら反応があるまで待つ。 だから、彼のように投げ込んですぐ巻いてる意味がまったく分からなかった。 「あんなんで釣れるんかなぁ・・・。」 哲也はその日、自分がまだ全然釣れてないことは棚に上げ、彼の釣果を心配していた。 しかし、そんな思い上がりは一瞬で破られる。 少し目を離したとき、彼がいる方向から突然バシャバシャッ!と水が裂ける音がした。 「なんだ?」 思わずそちらの方向を見る。 すると彼のあの短く細い竿が弓のように曲がり、糸がピンと張っていた。 「何かかかってるのか?」 そう思いながら見ていると、魚がジャンプした。 「すげー!なんかかかってる!」 哲也はいてもたってもいられなくなった。 そうこうしてるうち、彼はその魚を手元に寄せ引き抜いた。 哲也は気づけば彼のもとにかけよっていた。 そこには30cmほどはあろうかという、見たこともない魚が横たわっていた。 スズキのように見えるが、こんな池にそんなものいるはずがない。 「なんていう魚ですか?」 「ブラックバスだよ。」 と彼は教えてくれた。そしてそれが外来魚であることや、ルアーという疑似餌で釣れることなどを教えてくれた。 そして彼のもつルアーも見せてもらった。 「コイツ、引きも強いし、ジャンプしたりもぐったりして暴れるから、すげーおもしろいんだ!」 釣り上げたブラックバスを前に、彼は得意げに話した。 「ブラックバスか・・・。」 哲也はそれ以来、ブラックバスの姿や、水面でジャンプして抵抗する姿が目に焼き付いて忘れられなくなった。 なんとかそのブラックバスを釣ってみたい。 しかし、小学生の哲也のお小遣いではルアー用具一式をそろえることなど不可能であった。…

哲也昆虫記&哲也の福岡一周釣り行脚について

最近、新しい話を書いておらずすみません・・・。 自分の少年時代の話なので、ネタはたくさんありますが・・・・。 夏期講座で忙しく、とにかく絵を描く時間がない! というわけで、しばらくお休みしておりますが 必ず再開しますので、もう少々お待ちください。 始めたらいろいろな形でお知らせしていきますので、ぜひまたご愛読ください。 よろしくお願いします!

哲也の福岡一周釣り行脚 ~三平にあこがれた少年~ ②篠栗渓流ヤマメとの出会い その5

小さな滝まで来て、もう一度竿を伸ばす。 ここでどんな結果が待っているのか? まだ哲也は知らない。 ここでダメでも、またさっきのところに戻るという選択肢はない。 哲也は、仕掛けを少し作り変えた。 滝のところは流れが速いので、おもりを重くしたのだ。 さっきのところに戻るなら、またおもりを変えなければならない。 だから、もう戻る気はない。 えさは、この泡立つ滝つぼの中で目立つように、ミミズを使うことにした。 哲也はえさを付け終わると、滝つぼの少し下流から、滝つぼに向かってえさを投げ入れた。 するとすぐに、手にプルプルと魚がかかった感覚が伝わってきた。 「きた!」 哲也はすぐに竿を上げた。 銀輪が宙を舞う。 「ハヤか。」 いつもなら釣れて喜ぶハヤだが、さすがに今回はヤマメ狙いなので、釣れたはいいがちょっとがっかりした。 もう一度えさをつけかえて投げる。 すぐにまたアタリがくる。 「またハヤだ・・・。」 ここにはヤマメはいないんだろうか? でも、やるしかない。 さらにアタリがくる。 今度は真っ黒なものがきた。 よく見るとアカハラだ。 ※アカハラ=イモリ ふだん、かわいいと思ているイモリも、このときばかりは憎らしく見える。 哲也は針を外すと下流に向かってイモリを逃がした。 哲也はまた仕掛けをいじる。 今度は針を大きめにし、小さいハヤではそうそう口にかからないようにしてみた。 再度えさを投げ入れる。 さおをしっかり握りこみ、アタリを待つ。 しかし、今度はさっきまでのようにすぐにアタリはこなかった。 針を大きくしたからだろうか? さおを握ったまま、時が流れる。 そのうち仕掛けが流され、手元に来るので引き上げる。 哲也はこれではダメだと思った。 針を小さくすれば、小さい魚がかかる。 大きくすれば何もかからないまま、仕掛けが流される。 そこで、思い切って仕掛けを完全に変えることにした。 今度は中通しのおもりのかなり重いものを使うことにした。 そして滝つぼに仕掛けを沈めてしまう作戦だ。 そうすることで、竿も持ったままではなく、置いておくこともできる。 早速仕掛けを作り変え、えさをつけて投げ入れる。 それからしばらく竿を握って様子を見る。 今のところアタリはない。 哲也はしばらくしてから、竿を石を使って固定した。 そして、ちょっとゆっくりすることにした。 実際、ここは素晴らしい自然の中だ。 これまでヤマメのことばかり考え、周りが目に入っていなかった。 こうしてゆっくりと腰を落ち着けて、周りを見回してみると、いろんなものが見れた。…