おそらく、最初に入れていたショウリョウバッタも、あとから入れたキチキチバッタも この新しい家を気に入ってくれたように思う。 生き生きとした葉っぱは、お気に召してくれたようで、2匹とも草を無心にかじっている。 ほっとした哲也は、しばらくその場を離れた。 哲也とて、虫取りと虫の世話だけをしているのではない。 宿題とか、ほかにすべきこともある。 数時間後、哲也は気になってバッタの家のようすを見に来た。 すると・・・・。 「交尾してる!」 大きなショウリョウバッタの上に、小さなキチキチバッタが乗っかってたのだ。 「すげー!」 哲也は歓喜の声をあげた。 この事実は、この2匹が同種であることを意味しているからだ。 哲也はこの光景を見て、キチキチバッタがショウリョウバッタのオスであることを確信した。 しかし、安易に決めていいとは思っていない。 哲也にはまだまだこの先の展望があった。 とりあえずは、このまま彼らを飼い続けてみることにした。 彼らはそれぞれに草を食べたり また交尾したりといった感じで過ごしていた。 まあ、交尾が複数回成立しているので、99%同種で間違いはないのであろう。 哲也は同種だと決めつけたい気持ちをぐっとこらえて これからさらに見守っていくことにした。 哲也の狙いは何か? そう、産卵である。 図鑑によれば、ショウリョウバッタの産卵のようすは載っていなかったが、トノサマバッタの産卵のようすが載っていて、土におしりをさしこんで産卵するらしかった。 同じバッタならこういう行動をするのではないか? そう思い、観察を続けたが、なかなかその場面にでくわすことはなかった。 土が悪いのか、環境的に産むのには落ち着かないのか・・・。 哲也にはわからなかった。 そうこうするうちに、日にちだけが経過していった。 ある日、哲也はがっくりと座り込んだ。 昨日まで元気だったのに・・・。 キチキチバッタ(=おそらくショウリョウバッタのオス)が動かなくなっていた。 そう、彼は死んでしまったのである。 ただ、メスのほうはまだ元気にエサを食べている。 交尾は何度も確認しているから、メスだけでも産卵は可能なはず。 哲也はあきらめず、最後まで飼うことにした。